バラマキ型補助に翻弄されるインド農民たち【インド】
散布した畑の支柱に引っかけられている防カビ剤や農薬の空き袋とビン
ご存知のとおりインドはどこまで行ってもインド、というほど広大な国土で、アンドラ・プラデシュ州だけで北海道を除いた日本国土面積に相当する。対象地が点在するプロジェクトの場合、数日ごとに平均100km~200km を車で移動しなければならない。
最初に訪れた自然農業普及プロジェクトでは、適切な支援が最も手薄いセクターといわれる農業の厳しい現実を目の当たりにした。「農業補助金」は企業から農薬や化学肥料などの商品販促を受けた政府・自治体が購入を農民に勧めるひとつのツールと化し、一方でNGO セクターには有機農業などへの理解と協力姿勢を示すという矛盾した状況がある。
「100日間労働手当」制度で、その日の作業を終えて帰宅途中の女性たち
また、選挙で多くの票田を獲得すべく、中央政府・自治体や政党があの手この手の公約をして現金をばらまき、深刻な社会問題を引き起こしている。たとえばセデュール・トライブおよびカースト、バックワード・カーストなどと呼ばれカースト制度の最下層に位置づけられた人々への無料の住宅建設支援、テレビ配布、無利子融資、100 日間の建設労働手当て、インド版「定額給付金」などで、よくもそんなに財源があるものだと首をかしげてしまう。
100 日間の建設労働手当制度は中央政府のイニシアティブで昨年から始まり、住宅建設や道路補修工事等の1 日2~3 時間の労働で70 ルピー(約140 円)が手に入るようになったため人材が流れ、あちこちで農作業の人手が足りず、農民は悲鳴をあげている。無利子融資に味をしめてしまった人々は、NGO が必要最低限の事務管理コストを計算して設定したマイクロ・クレジット(零細規模融資)も無利子にするよう要求している。
こうした過剰なバラマキ型支援は、コツコツと勤勉に働いてきた人々に依存体質を植え付け、村の相互扶助システムや自立型運営への努力を根底から崩し始めているのを肌で感じている。
■報告:鈴木真里(事務局長)

