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2025-08-26

開催報告|Take Action! 連続講座2025 #2~ストリートファミリーの生活を体験しよう(2025.5.9)

2025年5月9日、Take Action! 連続講座2025~フィリピンのストリートチルドレンのために私たちができること~」第2回をオンラインで開催しました。

この連続講座は、ジャーナリストによる講義、体験学習、フィリピンの路上の若者とのオンライン交流などを通じて、フィリピンのストリートチルドレンの現状や課題を学び、ストリートチルドレンZERO(“誰一人取り残さない”)に向けたアクションの計画をたてる全4回の講座です。

フィリピンのストリートチルドレン支援に携わるACC21の現場とつながる形で構成されており、参加者が「知る・体験する・交流する・行動する」という4ステップを通じて、自分なりのアクションを見出していくことを目的としています。

第2回講座では、「ストリートファミリーの生活を体験しよう」をテーマに、参加者自身がストリートファミリーの生活(家計)に疑似的に触れることで、現地の実情を理解することを目指すワークショップ形式で実施されました。前回のストリートチルドレンについて「知る」講座に続き、高校生や大学生を中心に約25名が参加。講座は、ワークショップの説明、少人数に分かれてのグループワーク、各グループの発表・意見交換、実例を交えたフィードバックという構成で、2時間にわたり実施されました。

今回は、特に生活費のやりくりを体験するワークに重点が置かれ、フィリピン・マニラで実際にストリートで暮らす家族が直面する選択や葛藤を、数字と選択肢を通じてリアルに再現しました。加えて、フィリピンの実際の生活の様子も写真とともに共有され、現地の実情が生々しく浮かび上がる構成となっていました。

ストリートファミリーの生活(家計)を体験するワーク

メインプログラムは、ACC21の支援対象であるフィリピン・マニラのストリートファミリーの実例をもとに構成された「生活(家計)体験ワーク」。参加者は、グループに分かれて、

  1. 収入や生活費の情報をもとに月の家計収支を計算する
  2. 何にどれぐらいのお金をかけるかは、グループで話し合う
  3. 話し合った結果は、ワークシートに記入する
  4. 記入後、気づいた点や感想をグループ内で話し合う

という流れでグループワークを行いました。

18歳で高校1年生の“あなた(参加者)”と、ごみ拾いで生計を立てる父親、12歳で小学5年生の弟が一緒に暮らす3人家族というシナリオに沿って、あなたや弟が働くことも視野に入れた収入面と、その限られた収入の中での生活費の配分、教育や医療、食事などの支出面の優先順位を話し合いながら、家族の月の家計簿を作成する体験をしました。

各グループは、以下のような現実的な問いに向き合いました:

  • 自分が学校に通う時間を削ってでも仕事をするか、それとも弟にも仕事を手伝わせるか?
  • ストリートで生活をするか、それとも家賃を払ってスラムに家を借りるか?
  • 健康のために食費などにお金をかけるのか、それとも学校に通い続けるためにお金を節約するのか?

ワークを通じた気づきと対話

体験ワーク後の共有の時間では、参加者同士が感じたことをグループごとに発表しました。参加者からは、「大学進学をしたいという気持ちがあっても、収入を得なければいけなくて、高校の学びすら十分にできないと知り、トレードオフの関係だと感じた」「ただ働いて食べての生活を余儀なくされていることを実感した」「当たり前だと思っていた生活がいかに恵まれているかを痛感した」といった声もあがり、参加者の意識がより深まっていく様子が見られました。

こうしたジレンマに直面する体験は、参加者にとって「貧困」や「ストリートチルドレン」の問題を数字やニュースではなく、自分ごととして実感する貴重な機会となりました。

また、ACC21のスタッフからは、「実際に路上で生活している人たちが、今回のワークのように月単位で生計を考えられるかといったらそうではない。その日暮らしになってしまうことも多く、今日は学校に行けるけど明日はとても学校に行けないということもある。なかなか計画性を持って考えるとか、先のことを考えてお金を貯めるとかそういうことができない生活が実際のところだ。」というお話もありました。

路上での生活の厳しさや、貧困が選択の余地を奪う現実をより強く示していました。

参加者の声と講座の意義

終了後に実施されたアンケートでは、次のような声が挙げられました。

「何かを得ようと思えば何かを失うのは当たり前だが、その何かが簡単に切り捨てられるものではない状況だったので苦戦しました。」

「大学進学など教育に焦点を当てたくても、実現することの難しさを実感しました。」

「教育の面以外にも私たちよりもリスクがある生活環境の中で生きるストリートファミリーは怪我や病気のリスクが高いのにも関わらず医療費の工面が難しいために健康に暮らせないという問題があるということを学びました。」

「実際に金額を見ながら生活費や学費の配分を考えて見た事で、ストリート暮らしの厳しさをより印象深く感じ取ることが出来ました。」

「大学に進学したくても、収入がないので諦めないといけない。また、家族を養うために働くと学校にも通いにくくなる。そうやって教育が不十分なので、就ける仕事も限られてくる。そういう悪循環を断ち切っていかないといけないのだなと、感じました。」

この講座が単なる情報提供にとどまらず、心からの深い気付きを促すものであったことを嬉しく思います。

今後の講座

ACC21では、今後の講座において、より実践的な「ストリートの若者との交流」「アクションプランの作成」へとステップを進めていきます。次回は、実際に現地の若者たちとオンラインでつながる対話の機会を設け、今まで学んだことに対する自らの問いを深める回となります。

ストリートで暮らす家族の生活には、日々の選択が“命”に関わる重みを持っています。その現実を「感じる」ことは、私たちが見落としがちな社会のひずみに気づく第一歩となります。

本講座第2回が、参加者一人ひとりにとって、その現実に自分の感覚で触れ、自らの行動につなげるきっかけとなったことを願っています。

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。