ストリートチルドレンとは?
「ストリートチルドレン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。海外で実際に目にしたことがある人もいるかもしれません。2024年現在、世界には1億人以上のストリートチルドレンがいるとされており、それは世界の子どもの20人に1人にものぼります。
この記事では、フィリピンを中心に、ストリートチルドレンの現状と背景、子どもたちが直面している課題、支援の取り組みなどを紹介します。
ストリートチルドレンの定義や路上で生活する理由
ストリートチルドレンの定義
ストリートチルドレンは、「路上に住む、あるいは路上で生計を立てている18歳未満の子どもたちのこと」とされています。しかし、ストリートチルドレンと呼ばれている子どもたちがすべて、路上で寝泊まりして暮らしている訳ではありません。ストリートチルドレンについての詳細な定義はありませんが、大きく3つに分けられると言われています。
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Children on the Street日中は路上で働き夜は家に戻る子どもたち
この子どもたちは、スラムなどに家族で暮らしていますが、家庭が貧しく、毎日の食費や生活費を稼ぐために路上に出て物乞いや物売りなどをします。なかには、学校に通いながら路上で働いている子どもたちもいます
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Children of the street路上で寝泊まりしている子どもたち
家族はいても家に居場所がなかったり、食べるものがなかったりするなどの理由で、家にはほとんど帰らずに路上で生活をしています。
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Abandoned Children養育を放棄された子どもたち
この子どもたちは、親の育児放棄など、家族に見捨てられてしまっており、帰る家はなく、家族についてもほとんど知りません。路上に出て、自分と同じような環境にいる仲間と一緒に生活をしています。
このように、「ストリートチルドレン」の生活の実態、家族との関係、年齢、性別、生い立ちなどは様々で、ひとくくりにできるものではありません。
ひとりでいるか、仲間や家族と一緒にいるかを問わず、路上で暮らしていたり、働いている子どもたち、そして路上が生活するうえで重要な場となっている子どもたちを、近年は多くの国際機関、NGOが、「Children in Street Situations(略称:CiSS)」(路上の状況にある子どもたち)と総称しています。

©Yuichi Mori
子どもたちが路上で生活する理由
なぜ、子どもたちは路上で生活するのでしょうか。 この質問に答えるのは簡単ではありません。世界中にいるストリートチルドレンの数だけ、路上で生活している理由があります。貧困、自然災害による移住、紛争や戦争、家庭崩壊、親の死など、その背景は様々です。日本では、終戦直後の混乱期に、親を失った多くの子どもたちが、路上での生活を余儀なくされました。
これまでの支援と世界フィリピンの現状
支援の展開
20世紀後半から、途上国の、とりわけ都市部において、このようなストリートチルドレンの存在が顕在化し、社会問題として広く認識されるようになりました。特に、1989年に国連総会で「子どもの権利条約」が採択されて以降、国際機関やNGOなどによるストリートチルドレンへの支援が急速に拡大しました。
世界、フィリピンの現状
しかし、このような支援の拡大にも関わらず、世界には未だに推定1億人以上のストリートチルドレンがいるとされています。
なかでも、東南アジアの島国であるフィリピンでは、全体で推定37万人、首都マニラだけでも推定20万人以上のストリートチルドレンがいるとされています。ここからは特にフィリピンの現状について説明します。

近年、経済成長を遂げているフィリピンで、これだけの子どもたちが路上生活を余儀なくされている背景には、政府からの支援が不十分であることや、十分な教育を受けられないまま路上で大人になり、次の世代の子どもたちが路上で生まれ、路上で育っていくこと、などの状況があります。そして現在も貧困のため収入機会を求めて農村から都市に移住してくる人々が日々増え続けており、それに伴い路上で暮らす子どもがさらに増えていく、という悪循環が続いています。

その背景には、スペインによる統治時代に形成され、今も根強く残る大土地所有制度により、農村地域で生活できるだけの土地や収入源を持つことができないなど、さまざまな歴史的・社会的背景があり、貧富の格差は依然として大きく、都市貧困層の拡大を招いています。
ストリートチルドレンが直面している問題
子どもたちは路上で非常に危険で過酷な状況に置かれており、次のような様々な問題に直面しています。
児童労働
大半のストリートチルドレンが労働しながら、路上で暮らしています。
物売りや洗車、ゴミ漁り、お菓子売り、物乞いなどをするほか、買春や小さな窃盗など、犯罪に関与することもあります。栄養失調
多くの子どもが、満足に食事をとることができていません。空腹を紛らわすために、シンナーに手を出す子どももいます。
医療・教育への
アクセスの欠如栄養不足や不衛生な環境で、心身ともに不健康な状態にありながら、多くは医療にアクセスできていません。また、学校に入学しなかったり、途中で退学したりするなどで、十分な教育を受けていない子どもが数多くいます。
虐待・搾取
家族や周囲の大人から、虐待や搾取の被害に遭うこともあります。少女のみならず、少年も路上で性的虐待の被害に遭っています。
若年妊娠・出産
10代など若いうちに子どもをもつ少女もいます。若くしての出産は、母体の健康リスクが高いだけでなく、妊娠・出産・子育てによって学ぶ機会が限られ、収入も得にくく、一層の貧困に陥りやすくなります。
このように、ストリートチルドレンは本来享受できるはずの権利が奪われた状況に置かれ、さまざまなリスクにさらされながら生活しています。
このような問題に対処するため、国内外のNGOが次のような活動を行っていますが、支援の届く範囲には限界があり、子どもたちを取り巻く環境を大きく変えることは困難を極めています。
©Yuichi Mori- 路上での教育(Street education)
- 昼間に立ち寄れる施設(Drop-in center)などでの食事の提供、カウンセリング、教育
- 施設での保護と生活支援
- 家族との再統合(Family reintegration / reintegration)
- 自立のための支援 など
まとめ
ストリートチルドレンは、遠い世界の特別な話ではなく、今この瞬間にも世界中で起きている現実です。
貧困や家庭崩壊などさまざまな背景を抱えながら、路上で必死に生きている子どもたちは、私たちが想像する以上に危険にさらされており、その生活状況は困難を極めています。
こうした問題を根本から解決するのは簡単ではありませんが、私たちにもできることがあります。
寄付をすること、学ぶこと、そして学んだことを家族や周囲の人に伝えること――。
小さな行動の積み重ねが、子どもたちを支える大きな力になります。

©Yuichi Mori
この記事を最後まで読んでくださったことも、
ストリートチルドレンの未来につながる大切な一歩です。
これをきっかけに、できることから始めてみませんか?